猫と冬
”雪やあられが降ると猫は炬燵で丸くなる”、という歌があるが、我が家には炬燵がない。
炬燵はないが冬は寒い。
先述の歌にあるように、猫は炬燵で丸くなるほど寒さが苦手であり、それはミュウとシャケにおいても同様である。
だから、ミュウとシャケはいつも居間の電気ストーブの前で丸くなっている。
特にシャケは寒さが苦手のようで、ほんとにストーブのすぐ前を陣取っていて、昨冬はその距離の近さから髭を焦がしていたほどである。
”そんなにストーブの近くで寝ていたら暖かいというより熱いのではないか”と心配するくらいの距離感である。
今冬もそんなシャケの寒さ嫌いは変わらないようで、いつもストーブの前でごろごろしている。
僕が家にいる時は、割と夜遅い時間までひとり部屋でゴソゴソとしていることが多いが、そんな時は寒いので部屋のストーブを点けている。
家人が就寝する際、居間のストーブは消してしまうので、その後、寒さが苦手なシャケは暖を取ろうとストーブが点いている僕の部屋に移動してくるのである。
日頃、ミュウもシャケも僕のそばに来るなどということはないのだが、背に腹は代えられないのだろう、シャケは僕の部屋にやってきてストーブの前で体を伸ばして寝転んだり、時々は膝の上で眠ったりもする。
膝の上で眠っているシャケを見ていると、”かわいいなあ”と素直に思い、頭を撫でてみると、シャケはうっとりしたような表情でこちらを半眼で見たりする。
”俺の膝の上でこんなに気持ち良さそうに寝るのにどうして普段は近寄ってこないのだろう”と僕は不思議に思う。
そんなことを考えているうちに、僕もいつしか眠くなってくる。そして、眠る時にはストーブを消すことになる。
だから僕は、ストーブを消して布団に入る。
するとシャケはまだ余熱が残るストーブの前にしばらく座っているが、そのうち大きく伸びをした後、僕の部屋を出ていくのである。その足音が聞こえる。
次の日の朝、妻が、”昨晩はシャケがずっと布団の中にいて熟睡できなかった”、と言う。
シャケが必要としていたのは僕の膝ではなくストーブだけなのだ。
そして、そのストーブが消されると妻の布団に移動するのである。
”なぜ俺の布団で寝ない?”
寒さが身に沁みる冬である。
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