30年目のバイク
2017年6月、僕は10年間所有していたクルマを売却した。理由は、あまり乗らなくなったから、である。それからというもの、僕は自転車を日常の足としている。
自転車にはクルマのように身体をガードしてくれるものが一切付属していないので、夏は暑いし冬は寒い。そして雨が降れば濡れる。クルマに比べて快適性は著しく劣るが、僕は自転車は嫌いではない。
今はちょうど気候が良い時期なので自転車で走るのも快適だが、しばらくすると梅雨の時期になる。そして、蒸し暑い夏が来て、その夏の期間はゲリラ豪雨などに見舞われ、やっと気持ちのいい秋が来たかと思う間もなく、凍える冬が到来し、積雪による交通事故などが起きる。
もう考えるだけで憂鬱になるが、ことほど左様に日本において快適な時期というのは短いものである。しかし、僕はその四季を自転車で過ごしてきた。
思い返せば30年前、僕はバイクを売却した。
バイクを手放してから30年も経過すれば、バイクの新車情報などにはすっかり疎くなってしまった。しかし、気候が良い時期などに気持ち良さそうにバイクで走っているライダーを見ると、ちょっと乗ってみたいな、などと思うこともしばしばで、時々はそういう思いを妻や娘たちに話すこともあったが、その反応としては、だいたい、もう年なんだからバイクなどに乗ったら間違いなく死ぬ、そもそも乗れるの?、バイクに乗る前に物忘れをなんとかしたら?、などと言われる始末で、まったくもって取りつく島もないとはこのことであるなあ、などと思っていたのであるが、バイクに乗りたい、好きだ、という気持ちはいつもぼんやりと僕の中にあって、ここ数年は、ネットでちょいちょいバイクの情報を仕入れるなどしていたのである。
そんなアルフィー、僕は妻と歩いていた。
僕たちがいる歩道の反対車線側に一軒のバイク屋があり、僕はそのバイク屋にちょっと視線を移したが、特になにかを喋ったわけではない。ただ、ちょっと見ただけである。すると妻が突然、バイク買っていいよ、と言ったのである。僕は本当に驚いた。だって、僕の物忘れは一向に改善していないからである。
妻が突然、僕のバイク購入を許可した理由は、これからの暑い時期、おっさんが汗だくで自転車をこいでいるのを想像すると可哀想に思えたから、というものだったが、購入にはちょっとした条件が付いていた。
それは、会社と単身赴任先のマンションの往復だけに使用すること、というものである。つまり、昔のように、ツーリングなどに行くのは危険だからNGということである。その条件を重く受け止めた僕は、はーい、と重く返事をし、各バイクメーカーのサイトをチェックし始めたのだった。
とは言っても、先にも言ったように、僕はここのところ、ちょいちょい情報を仕入れていたのであって、バイクをを買うなら原付二種かなあ、とか、メーカーはホンダがいいなあ(まだ本田宗一郎がいた頃のイメージが強くあって、ホンダのバイクが好きなのです)、とか、どうせ買うならスクーターじゃなくてギア付がいいなあ、なんてことは既にイメージしていたのである。となると、車種はある程度限定されてくるので、最終的にはそこからどう絞り込んでいくか、ということになる。
いつかミュウとシャケとのタンデムツーリング、なんてことが実現しないかなあ、などと妄想したりしている。(まあ、ありえないけど)
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