くせが強いものが好き
外出から帰宅してソファに座っていると、シャケが僕と目を合わせず、でも明らかに僕を意識しながら、こちらに向かってゆっくり歩いてくることがある。そんな時、シャケの目はしぱしぱしている感じである。
そして僕の足元に来ると、僕の足の臭いを嗅いだ後、僕の足に頭を擦りつけるなどする。シャケがなぜそんな行為に至るのかというと、シャケはくせの強い匂いが好きだからである。
こう書くと、”ははーん、お前の足は臭いんだな”などと思う人があるよね、と容易に想像できるが、それは違う。僕は外出の際、ブーツを履いていたのである。そして、そのブーツは、ホーウィン社のクロムエクセルというレザーで作られている。クロムエクセルは独特の匂いがし、その匂いが靴下に移り、その匂いに引き寄せられてシャケがやってきて、頭を僕の足にすりすりしているのであって、僕の足本体が臭っているわけでは決してないので誤解されないように願いたい。その証拠に、僕がその靴下を脱いでフロアに放り投げると、シャケは僕から離れてその靴下のところに行き、靴下にじゃれつくなどするのである。
とまれ、シャケはくせの強い匂いフェチと言えるだろう。
このように、フェチというか嗜好というのは、ちょっとくせが強いくらいの方が刺激的でよろしい、などと僕などは思うのである。
たとえば、僕は酒を飲むのが好きである。家でも飲むが、外で飲むのも好きで、時々ふらっと飲みに行くことがあるが、そういう時は”さて、どの店に入ろうか”というところからスタートするわけだが、僕の場合、くせの強そうな店を選択してしまうのである。
まず、チェーン店の居酒屋などはまっさきに候補から外れる。つーか、候補にも入らない。『雑然』、『立ち飲み』、『角打ち』、『路地』、『独特の雰囲気』、『昭和』などのキーワードに当てはまるような店があるとふらっと入ってしまう。ひとつはっきりと言えるのは、家族で入るような店ではない、ということである。つーか、家族は僕が好む店には100パー入らない。つーか、僕も誘わない。つーか、誘おうとも思わない。
これって考えてみると、ブーツのレザーの匂いがする足にすりすりするシャケと同じようなもので、なにを好き好んで快適さとは無縁の飲み屋に敢えて入るのか、つーことではないだろうか。
その点において、シャケと僕は似た者同士と言えなくもないが、やはり、二者の間には目に見えないウォールがあるような気がするのは気のせいではないような気がするウォール。
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