嵐からの隠れ場所
シャケは、寝ている時に、”シャケ~”、と呼ばれると、目は閉じて横になったまま、尻尾でフロアをパタンと叩いて返事をする。もう一度、”シャケ~”、と呼ぶと、やはり同じようにシッポでフロアをパタンと叩く。
”シャケ~”、パタン。
”シャケ~”、パタン。
”シャケ~”、パタン。
こんな感じである。
(すべて目は閉じて横になったまま)
今日も暑い!とても暑い!
という台詞もいい加減言い飽きた、というある日、福岡はものすごい夕立が降った。
一天俄かにかき曇り、突然ものすごい雨が降ってきた、と思ったら、それに伴う雷がまたものすごい。窓の外では稲光が走ったかと思うと、それほど時間をおかずに、高圧電流が流れる嫌な音がし、その直後に落雷の爆音が轟く。これの連続。波状攻撃である。
猫一倍臆病なシャケは、狭い家の中を走り回り、安全で落ち着ける場所を探している。一方のミュウはというと、いつも通り、いつもの場所で普通に寝ている。さすが。
僕はこの後、単身赴任先に戻らなくてはいけないのでその準備をしていたが、シャケが三女の部屋に低い体勢を維持したままササっと入っていくのを視界の隅に捉えていた。
雷が静まり、雨も小雨になって、少し薄日が差してきた頃、僕の家を出る準備もほぼ整った。そこで、僕はシャケがどこに避難したのかが気になって、シャケを探し始めたのだが、どこにいるのかとんとわからない。
狭い家であり、シャケがいつも避難する場所もなんとなく把握していたので、めぼしいところをチェックしてみるが、どこにも見当たらない。
そういえば、さっき三女の部屋に入っていったな。
それを思い出した僕は、三女の部屋に行き、”シャケ~”と呼んでみた。
パタン。
尻尾で返事をしている音が聞こえた。
”シャケ~”、パタン。
”シャケ~”、パタン。
”シャケ~”、パタン。
間違いない。この部屋にいる。
そう確信した僕は、部屋の中をさんざん探した挙句、クローゼットの中に置いてある三段ボックスの引き出しを引っ張り出してみた。
そこでシャケは丸くなって寝ていた。
シャケは、三段ボックスの裏側に避難していたのである。今までこんなところに入ったことないのに。
そして、僕が家を出るまで、シャケはそこから出てこなかった。
よっぽど怖かったんだろうなあ。
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