早朝、いや、まだ深夜と言っていいかもしれない時間帯、眠りから目覚めかけ、小さくうなり声を上げながら寝返りをうつなどしていると私の部屋から少し離れたリビングからペタペタとこちらに近づいてくる足音が聞こえてきた。
『今日もか。』
足音の主は私のベッドに飛び乗り私の顔にその顔を近づけてくる。
クーが私を起こしに来たのである。枕元のスマホで時刻を確認すると午前3時30分くらい。
『マジか。まだ早すぎる。無視しよう。』
しかし、クーは容赦しない。私の顔を引っ掻いて無理矢理起こそうとする。私は仕方なくベッドから出てクーとシャケに餌を与えてからトイレに入る。トイレを出ると少しだけ餌を食べたクーが猫用トイレに向かうところとすれ違う。私はクーが用を足すのを待って、クーのおしっこを片付けてからまたベッドに入る。ということが毎日のルーティンになっている。
早朝というか深夜というか微妙な時間帯に毎日起こされるのは辛い。特に寒い冬は辛い。
しかも頭にくるじゃないですか。クーの皿には前日の餌の残りが入っていることがよくある。それなら私を起こさなくても空腹であるのであればそれを食べれば良いではないか、と思うわけですよ。だからなのかなんなのか知らないが、私が餌を与えてもクーは大して食べない。ほんの少しだけ食べるとトイレに用を足しに向かうのである。
妻はこのルーティンを知っている。
『今日はちょっと早かったね。』
こういう会話が朝の定番になっている。
時々、クーが私を起こしにくる前に妻がトイレに起きることがあるそうだ。
『だったら起きた時に餌あげてよ。』
『だって私が起きてもクー寝てるもん。』
つまり、クーは妻には餌の催促はせず、妻が再び布団に入った後にわざわざ私のところに餌の催促をしに来ていることになる。
『なぜか。』
クーは別に空腹のため私を起こしにきているわけではない、ということではないか。第一に餌を与えても大して食べない。少し触れたが、なんなら前日分が残っているくらいだ。第二に妻がトイレに行く際には別に餌を欲しがらない。
この二つから導き出される答えは、私を起こすことが目的となっているからではないか。もう、それしか考えられない。
『ではなぜ私を起こすことが目的なのか。』
わからない。それはクーにしかわからない。クーに理由を聞いても答えてくれない。一度聞いてみたけど答えてくれなかった。
『明日も行くよ。』
みたいな顔をしていた。
寒い時期に意味もなく起こされるのは辛い。しかし、喉を鳴らしながら枕元に来るクーは正直かわいい。
これから暖かくなってくるし我慢して付き合ってやろうと思っている。