シャケはアレルギー持ちである。症状としては主に咳だが、たまに鼻もグズつかせている。定期的に動物病院に行き薬を処方してもらっている。
シャケはちょっとどうかと思うほど臆病なので、病院に連れて行くのがとても大変だ。ケージを見せてしまうと病院に行くことを察知してどこかに隠れてしまうから、ケージを隠しておいて、まずはシャケを確保しケージまで抱えて行く。ケージに入れるのがまた大変で、四肢を大きく広げてケージに入れられないように抵抗する。その際、ケダモノの声を出す。病院に着くまでそのケダモノの声は続く。かわいそうだが、諦めが悪いヤツ、と思う。いい加減わかれよ、とも思う。
この時のケージはシャケにとって、自分を不快な場所に運ぶために監禁される檻のようなものなのだろう。
病院に到着し、受診のためケージごと診察台の上に置かれ、ケージから出そうとすると身体を低くかがめて、出されまじ!、なんて言っている。さっきまで、俺ぜってー入らねーから!、とか言ってたくせに。
この時のケージはシャケにとって、自分を守ってくれるシェルターのようなものなのだろう。
やっと診察が終われば、今度は帰宅するため再びケージに入らなければいけない。あー、また家を出る時のアレをくり返すのかー、とゲンナリした気持ちになりながら、ケージの蓋を開けると、シャケは自らぬるっとケージに入り、尻尾をくるりと丸めながらきれいに収まり、上目でこちらを見ている。帰ろう、と言っている。
この時のケージはシャケにとって、安心できる場所に帰るための快適な乗り物なのだろう。
帰りの道中、シャケはまったく鳴かない。