ある日、妻から、なんか辛そうだけど大丈夫?、と尋ねられて、ドキっとした。
毎朝、単身赴任先のマンションで、iphoneのアラーム音が鳴りだす少し前から目は覚めてはいるが、布団を被ったままアラームが鳴るのを待っており、いざアラームが鳴りだしてもベッドから出る気分にはならず、いっそ今からウイスキーを飲んで仕事を休もうかな、などと思うが、そうもいかないな、などとひとりtweetしながら溜息をついてベッドから、よっこらしょと起き出して仕事に行く支度を始める。
そんで、会社では淡々と仕事をこなしながら時計ばかりが気になって、結局のところ、仕事をしながら仕事が終わるのをひたすら待っているだけなので、かえって時間は進まない。なんで俺はこれほど怠惰になってしまったのか、などと考えながらも、ゆっくりとではあるが、とにかく時間は進んでいるので、こんな状態のまま2年ほどが経過してしまったある日、妻から、大丈夫?、と尋ねられたのである。
大丈夫か?、と尋ねられると、大丈夫だ、と答えるのだが、その時、自分の心の奥の方に住んでいる人の目尻がぴくりと動いたような気がしないでもなかった。
そもそもなんでこんな状態になってしまったのか、ということを考えないわけではなかった。単身赴任をしているので、時間はいくらでもあるのである。
そして、その答えは目の前にあって、はっきりしているようにも思えるし、なにか他の様々な理由とがマーブル状になってはっきりしていないようにも思えるのだった。
とにかく、答えが見つからないというのは、なんとも気持ちの悪いものではある。
3月に入って一週間ほど過ぎたある日、職場の上司に声をかけられ応接室に呼び出された。その日は4月1日付け人事異動の内示の日だったのである。
ああまた転勤か、今度はどこに行くのか、などと考えながら応接室の椅子に座り、上司の話を聞いてみると、勤務場所は現在のままで部署が変わると言う。その部署は、僕が今まで経験したことのない業務を行う部署であり、そしてなによりも、まだまだ単身赴任生活が続きそうだ、ということがわかった僕は、内示を聞きながら、もう会社辞めようかな、などと考えていたのだった。
その上司の話は、なぜ僕がその部署に異動することになったのかという経緯をくだくだと話し続けるので、僕は少し考える時間を与えられたような形になったのであるが、その時間を利用して、僕は、その部署に異動した後のことを想像してみたのである。
その部署に異動になった場合、その仕事は僕にとってまったく未知の領域であり、この歳でなにかと苦労をすることもあるかもしれない。しかし、今現在の僕の直属の上司(内示を話している上司とは別の人で、面倒なので以後、A上司という)とは別の部署に異動することになるわけで、そうなると当然、そのA上司とは距離を置くことになる。ということを想像した時点で、なんか気持ちが軽くなったのを感じて僕は驚いた。
なんか答えがはっきりしていなかったものが急にはっきりしたような気がしたのである。
最初、もう辞めようかな、などと考えていたのが、A上司と離れられる、と考えた途端、気持ちが軽くなったのである。
つまり、僕がなぜブルースに憑りつかれていたのか、その理由が判明したわけである。
そして、僕はその辛い状況からとりあえずは抜け出すことができそうである。
続きを読む