二本立て
シャケがマンションのベランダのフェンスにひょいと飛び乗ったと思ったら、足が滑ってフェンスの向こう側に消えた。
慌ててフェンスまで駆け寄ると、シャケはフェンスの上のほうに爪を立てて、なんとか落ちないように自分の体を支えていた。
僕は、慎重に、ぶらさがっているシャケの体を持ち上げて、そのまま部屋に入りシャケを抱きしめた。
シャケがベランダから落ちて、怪我などをしなくて本当に良かった。
心底そう思いながら。
↑
シャケ
その日は台風だった。
空はどんよりと暗く、雨は小降りだが風はものすごく強い。
遠くに見える木立は風で大きく揺れている。
ベランダに残っていた空のペットボトルの容器が風に煽られてカランカランと音を立てて転がっているので、それを回収しようと窓を開けると、シャケがさっとベランダに出て、またフェンスに飛び乗った。
かと思うと、またシャケがフェンスの向こう側に消えた。
それを見ていた僕は、びっくりしてフェンスに駆け寄ると、この前と同じように、シャケはフェンスに爪を立ててぶらさがっている。
僕はシャケをつかまえようと手を伸ばしたが、つかまえる前にシャケは体を支える力がなくなったのか、落ちてしまった。
手足を大きく動かしながら落ちて、だんだん小さくなっていくシャケを僕はベランダから祈るように見ている。
なんとか無事に着地してくれ!
風は猛烈な勢いで吹き続けていて、その風に煽られながらシャケは落ちていく。
シャケは前足を鳥が羽ばたくように動かしている。
すると、猛烈な風がマンションの壁に当たって上昇気流が発生したのか、シャケの落下スピードが徐々に緩やかになってきて、今度は少しづつ上昇してきたのである。
さらに鳥のように大きく前足を動かすシャケ。
シャケがんばれ!と僕は叫んだ。
風に煽られながら必死で前足を動かすシャケを僕は祈るように見つめる。
横を見ると、隣家の住人もベランダからそんなシャケを見ている。
頑張ったシャケは、強風のせいで隣の家まで流されながら上昇を続け、燐家のベランダの前までたどり着いたところを無事隣人にキャッチされた。
隣人からシャケを受け取った僕はシャケの頭を撫でながら、シャケの無事をマジで神に感謝したのだった。
という二本立ての夢を見た。
目覚めると、シャケがこちらを見ていて、僕がベッドから降りるとエサをもらおうと歩き始めた。
たくさん食べなさい。
スポンサードリンク
にほんブログ村