僕が居間にいるとどこから出てきたのか、シャケが視界に入ってきた。
シャケは舌なめずりをしている。
ん?と思った。これは、なにかを食べたあとにする仕草なのである。
エサはとっくに食べ終わっていたはずで、もうなにも食べるものはないはずである。
では、なぜシャケは舌なめずりをしているのか?
そこで僕は、"シャケ君、なにか食べましたか?"と尋ねた。すると、"いや、なにも食べてませんけど?"と答える。"では、どうして舌なめずりをしているんですか?"と問うと、"舌なめずりしたらなにか問題でも?"などと黒目がちに返答するのである。
返答後、なにもなかったかのように毛づくろいを始めるのがまたあやしい。
そして、シャケが黒目がちのときは、なにか良からぬことをするかしたかの証拠である。
なんとも白々しいやつだ。
そこで僕は、キッチンに行きシャケがなにかを食べた痕跡がないか探してみたが、特にそれらしいものは見つからない。
でもよく見てみると、目玉焼を調理した後の洗っていないフライパンがガスコンロに載っていた。
どうも、フライパンの表面に残っていた油を舐めた後の舌なめずりだったようだ。
シャケはこれを舐めた後、満足して舌なめずりをしていたのだ。
シャケ、君は化け猫か。